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冴雫
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※モブ視点





 改札を出て、溜め息をつく。
 ざあざあと地面を打つ雨は、弱まる気配がない。
 今日は夕方頃から強い雨が降るでしょうと朝の天気予報で言っていたのに、傘を忘れてしまうとは失敗した。
 学校最寄りの駅までは友達が傘に入れてくれたが、用事があって出向いたこの終点駅は友達の自宅とは逆方向だ。
 多少濡れるのは覚悟で目的地まで走るか、コンビニでビニール傘でも購入するか。
 どちらにしてもここから離れなければならない、と覚悟を決めて一歩を踏み出そうとした時、肩をぽんと叩かれた。
 振り返ると、同じ制服を着た女の人がいる。

「あなた、傘持ってないの?」
「は、はい……」

 先輩、だろうか。
 私と同じ一年生には見えない。

「あ、突然ごめんね。同じ高校だよね?私は三年の春日望美」

 やはり先輩だった。
 春日先輩、という名前には聞き覚えがある気がする。
 慌てて私も学年と名前を名乗ると、よろしくという笑顔と共に傘を差し出された。

「傘持ってないなら、この傘使って」

 春日先輩が手にしているのは華奢な取っ手でシンプルな柄の傘。
 この傘を私が借りてしまったら、逆に春日先輩が困るのではないだろうか。
 困惑しながら断ろうとすると、先輩はにこりと笑った。

「私なら大丈夫。近くで待ち合わせしてるから、ここまで迎えにきてもらうよ」
「でも……」

 私が傘を借りるせいで手間をかけさせてしまうなら、やはり申し訳ない。
 そう思っていると、春日先輩の後方から歩いてきた人が、口を挟んだ。

「お嬢さん。私に、恋人と相合い傘をする口実をいただけませんか?」
「銀!?」

 彼の手には、今は閉じられてぽたぽたと雫を地に落としている男性用の大きな傘。

「なんで駅にいるの? 待ち合わせはカフェだよね?」
「あなたに会うのが待ちきれなくて、来てしまいました」

 彼の言葉に、春日先輩は顔を赤くする。
 私は完全に蚊帳の外かと思っていたが、ふと彼が私に向き直って微笑んだ。

「こういうわけですので、どうか遠慮なさらずに、傘をお使いください」
「えっと……」
「口実があったほうが、この方も素直に私の傘に入ってくださいますから。ね?」

 彼が、私に見せたのより格段に甘い笑顔を春日先輩に向けたのを見て、私は決心した。
 素直に傘を借りよう。
 そろそろと傘を受け取り、礼を言う。
 返す時の為に春日先輩のクラスを聞いて、私のクラスも告げる。
 もう一度二人に頭を下げてから、私は傘を開いて雨の中に飛び出した。

 少し歩いてから振り返ると、駅から離れていく一つの傘が目に留まる。
 見覚えのある大きな傘の下、二つの人影がそっと寄り添っていた。
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