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冴雫
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前の前に書いた吉日と同じく、7月にやった診断メーカー。
これも短い。

>40分以内に1RTされたら、床の上で、苦笑しながら髪にキスをする金日をかきましょう。 #odainano http://shindanmaker.com/68894






 ソファを背もたれに、床に敷かれたラグにクッションを抱え込んで座る香穂子は、どこからどう見ても機嫌が悪そうだった。
 いつもはたわいないことを囀る口は閉じられ、唇が僅かに突き出されている。
 クッションは形を崩すほどに力を込めて抱き潰されていた。
 金澤は香穂子用に買ったマグカップをソファ前にあるローテーブルに置き、自分は立ったままコーヒーを啜った。
 行儀が悪いが、近いのに目線が高くなるソファに座ったり、突然香穂子の隣に座り込んだりするのは、今の状況ではいい選択ではない気がしたのだ。
 少しだけ離れた位置で、窓から空を見上げるふりなどしながら香穂子を見守る。

「――冷めちまうぞ」

 ゆらゆら立ち上る湯気が、段々少なくなってくる。
 見かねてぽつりと注意を促せば、香穂子の右手がクッションから離れた。
 他人を警戒する子猫のように、そろりと手をマグカップに伸ばす。
 右手で取っ手を掴み、クッションを腹と膝の間に挟んだことで空いた左手を反対側に添える。

「……あったかい」

 どこか強張っていた表情が緩んだ。
 大きめのマグカップを両手で支えて傾け、中のココアをこくりと飲み下す。

「……マシュマロ」

 単語だけぽつりと落とした、小さなわがまま。
 金澤は、はいはいとおざなりにも聞こえる応えをし、手にしていたカップをローテーブルに置いた。
 そうして先程までいたキッチンに戻り、マシュマロの袋を開けて小皿にいくつか出し、一応スプーンも添えてローテーブルへ運ぶ。
 すると香穂子はマシュマロを指で摘み、ぽちゃんとココアに落とした。
 白いかたまりが、茶色い水面でくるくると回りながら溶けてゆく。
 それを眺める香穂子の空気がもう張り詰めていないのを見て、金澤は香穂子の隣に腰を下ろした。
 体勢を整えた途端に、小さな頭が肩にもたれ掛かる。
 香穂子はそのまま金澤に体重を預け、ぐりぐりと頭を擦り付けてきた。
 金澤はなだめるように頭をぽんぽんと叩き、滑らせた指で髪を一筋掬い上げた。
 気まぐれで、まるで猫のような恋人につい苦笑が漏れてしまうこともあるが、そこもまた愛しいのだ。
 髪にそっと触れた金澤の唇は、緩やかな孤を描いていた。





※tipetto……かわいい人、魅力的な人、愛らしい人、素敵な人
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