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冴雫
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ハッピーバレンタイン!
と、いうわけでバレンタインSSSです。

昨日まで書くつもりはなかったのですが、いざ当日になったらふと浮かんで…。
今回はネタバレ含む後書があります。



SSSは追記から。






 2月14日。
 特別な意味を持つこの日に、香穂子は人待ち顔で駅前に立っていた。
 手にした紙袋の中身を渡すべく、事前に取り付けた逢瀬。
 本当はいつものように、特に約束もせず理事長室に押しかけるつもりだったのだが、今回は吉羅が待ち合わせ場所と時間を指定してきたのだ。
 これが休日ならば、香穂子の家近くの交差点や駅前で待ち合わせることもあるのだが、平日には珍しい。
 そんなことを改めて考えながら景色を眺めていると、見慣れた外車が滑り込んできた。
 小走りで近づくと、運転席から人が出てきて助手席のドアを開けてくれる。

「待たせたかね?」
「いえ、そんなに」

 会話を交わしながら乗り込もうと座席に視線を落とす。
 すると、深紅の薔薇が一輪置かれているのが目に入った。
 脇には白い楕円形の小さな箱。淡いピンクのシフォンリボンが、箱を包むように結んでいる。
 香穂子が思わず吉羅を見ると、彼は僅かに口角を上げた。

「君へのプレゼントだ。話は乗ってからにしよう」

 言葉と視線に促されて、香穂子は薔薇と箱をそっと持ち上げ、大切に抱えながら助手席に腰を下ろした。
 花を潰さないように気をつけてシートベルトを締めると、吉羅がちょうど運転席へと乗り込んだところだった。
 エンジンをかける姿を横目でちらりと見、手にした薔薇の香りをかぐ。
 芳醇な香と、ベルベットのような花弁に吐息を零した時、車が動き出した。
 そこで、香穂子はまだ礼を言っていないことに気づいた。
 慌てて姿勢を正し、顔を左に向ける。

「暁彦さん、ありがとうございます。薔薇、きれいですね」
「その言葉を貰うのは少し早いな。箱を開けてみたまえ」

 吉羅の言葉に首を傾げながら、香穂子はリボンをしゅるりと解いた。
 蓋を持ち上げると、そこに収まっていたのは薔薇。
 しかし、深紅のものとは異なる。
 人工の、チョコレートとホワイトチョコレートで象られたものだったのだ。

「うわぁ……!」

 チョコレートという食べ物で出来ているのに、食べるのを躊躇してしまいそうになるくらい見事な薔薇。
 おいしそう、という言葉より先に、きれいという言葉が浮かぶ。

「こっちの薔薇も素敵ですね。ありがとうございます!」

 笑顔で礼を言い、香穂子は自らの膝に置いた紙袋に目をやった。
 いかにも高級なチョコレートを渡された後では、躊躇を感じずにはいられない。
 けれど、相手がそんなことを気にするような人ではないと知っている。
 だから、香穂子は紙袋から箱を取り出し、車が信号で止まった隙に吉羅の視界に入れた。

「私からもプレゼントです。今年も手作りなんですけど」
「それは楽しみだ。――食べさせてくれるかね?」

 信号が青になり、車が発進する。
 吉羅の問いかけの形をした確認に、香穂子は頷いた。

「はい、もちろん! 食べてもらうために作ったんですから。この後、どこか落ち着いたところで改めて渡しますから――」
「私は今食べたいんだが」

 吉羅の愉しむような声音に、香穂子はぎぎ、と首を動かした。

「……暁彦さん、今、運転してますよね」
「ああ。だから聞いただろう? 『食べさせてくれるかね』と。そして、君は頷いた」

 さあ、と闇の中で聞くのと酷似した響きに惹き寄せられる。
 丁寧に施した包装を自分で解き、少し不格好なチョコレートを指先でつまむ。
 再び信号で止まったのを見計らい、吉羅が薄く開けた唇へと近づけた。
 食べやすいように一口サイズで作ったチョコレート。
 それを口に入れようとすれば、指先が唇に触れる。
 意識しないように、なんでもないのだと念じながら、吉羅の歯がチョコレートを捕らえたのを確認し、香穂子は素早く指を引こうとした。
 だが、手首を掴まれ、指先についてしまったココアパウダーをぺろりと舐められる。

「――……っつ!」

 何か言おうにも言葉にならず、香穂子は口をぱくぱくとさせた。
 吉羅は流し目を送ると、アクセルを踏んだ。

「お返しに、そちらのチョコレートは私が君に食べさせてあげよう。――ああ、だからと言ってホワイトデーにお返しがない、ということはないので安心したまえ」

 愉しそうに歪んだ口元に、香穂子は抵抗する術も理由も持っていなかった。
 ああもう、と何につきたいのだかわらない悪態を心の中でつく。
 そして、せめてもの抵抗にと、吉羅に見せつけるようにして深紅の花弁に口づけをした。





後書

※妄想、語り入ります。

twitterではちょっと呟いたんですが、ふと薔薇チョコを香穂子に贈る吉羅と、薔薇チョコを食べさせあう吉日が思い浮かびまして!
吉羅なら海外の風習では~とか言いつつさらっと薔薇贈りそう

アンコールのデートで香穂子=食欲旺盛がインプットされてそう

花より団子的な感じで食べ物、だけどやっぱりただの食べ物じゃなくて薔薇

いっそ両方贈るor選ばせる→選ばせた場合、「金の斧銀の斧」みたいな感じで結局両方あげそう

薔薇のチョコを二種類用意して、片方選ばせるのもいいな。余ったチョコは吉羅が食べる=食べさせあいっこ

と、いう横道に逸れたあげく一番書きたかった食べさせあいっこが書けてないという…。


ちなみに薔薇チョコはこないだテレビで見て、思い出して検索して
こちら

www.mesrose.com/sonia.html

のサイト見て参考にしました。
タイトルも商品名からお借りしました。

そして、書いてる最中はネオアンの同タイトル曲をエンドレスリピート。



今日は断念しましたが、薔薇チョコ食べさせあいっこも数日中に書きたい。
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