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冴雫
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拍手ありがとうございます!
何度いただいても嬉しくなります。



さて、何か書きたかったので「キスお題ったー」。

金日さんにオススメのキス題。シチュ:思い出の場所、表情:「目を見開く」、ポイント:「抱き締める」、「相手にキスを迫られている姿」です。 #kissodai http://shindanmaker.com/19329



※迫ってるのは香穂子
※キャラ違う

大丈夫そうな方は追記からどうぞ。






 金澤が猫缶を携え、森の広場で猫を探していると、目星をつけていた場所には予想外の姿があった。
 建物の脇。少し開けた、けれど人目につきづらいスペース。
 日当たりがいいので猫が集まりやすく、金澤も時々訪れてはお猫様相手に相談をしている場所だ。
 そこにいたのは、つい先日学院を卒業した元生徒の姿。
 猫を撫でて微笑んでいるのを見て可愛いと思ってしまっても、今では後ろめたさがない。
 なにせ、その元生徒は卒業したとともに金澤の恋人となったのだから。
 二年程前、この場所でお猫様相手に自覚してしまった恋心をどうしようか悩んだのも、もう懐かしい思い出となった。

 さて、その恋人は、金澤に気づくとぱあっと顔を輝かせた。
 こんなに表情、そして感情が豊かで、よく二年近くという長い間想いを口にしないで耐えられたなと感心をする。
 隠す必要がなくなった自分も、今は緩んだ顔をしているんだろうとは思いながらも。
 恋人、と言っても、実はまだ何もしていない。
 いや、告白はした。
 互いに口に出すことのできなかった想いを言葉にして、明確に「お付き合い」を始めたのだ。
 けれど、まだ口づけはおろか、抱擁や手を繋ぐことすらしていない。
 耐えた二年間のおかげで、ただ想いをあらわにして通じることができるだけで幸せだ、というのもある。
 一方、つい先日まで教え子だったのだ、という意識が残っているのもある。
 大切にしたいという想いも真実だし、一回り以上、自分の半分程の年齢の少女に恋人としてどう接したらいいのかという戸惑いもある。
 いろいろな想いや思考をはらんで、金澤は結局身動きがとれていなかった。
 恋人としては始まったばかりなのだし、ゆっくりと進めていけばいいかなどという、余裕なのだかへたれているのだか自分でもわからない結論に落ち着いていた。

 ――が。
 恋人はどうやら自分とは考えが違ったらしい。
 隣に腰を下ろそうとした途端、輝いた表情のまま抱き着かれた。
 動作の途中にそんなことをされ、バランスを崩した金澤の尻は意図していたところとは別の場所に、些か強くたたきつけられた。
 けれど、問題は僅かに痛む尻などではない。
 上半身を軽く起こしただけの金澤に乗っかるようにして、身を預ける香穂子だ。

「……日野」

 咄嗟に出そうになった、「重い」という単語は飲み込む。
 実際に重いなどとは感じていないが、感じた衝撃とこの体勢が、なんとなくその単語を引き当ててしまったのだ。
 「どいてくれ」とも言いづらい。首筋に腕を回している恋人の顔を見れば離れがたさを感じてしまうのだから。
 一応、辺りを見渡して猫しかいないのを確かめると、恋人の背に片腕を回して抱きしめる。
 それと同時に、少しきつい体勢を支える為にもう片腕を後ろ手についた。
 何とは無しに、はあ、と息をつきそうになったのをまたもや飲み込む。
 その代わりのように、口を開いた恋人の吐息が耳をくすぐった。

「紘人さん、去年、ここで猫相手に相談してましたよね。その悩みは解決したわけですし、今度は違う相談をしたらどうですか?」

 くすりと笑いながら告げられる。
 恋人の言う「相談」とは、金澤が先程思い浮かべていたのと同じだろう。
 あの時、彼女にこの場所を発見されたのだが、まさか相談内容まで聞かれていたのだろうか。
 なんとなく察されているだけだとしても、実際に聞かれていたとしても恥ずかしい。
 金澤は、一昨年の相談内容に触れることは避けた。

「――今度は何を相談しろって?」

 代わりに問うた内容に、恋人は腕を解いて金澤の顔を覗き込み、瞳をじっと見つめた。
 緩く上がった口の端は、ただ楽しげなだけにも、蠱惑的にも見える。

「恋人への接し方です。まずは呼び方。それと――」
「ひ、」

 ひの、と動かそうとした唇が細い指に押し止められる。
 そしてゆっくりとその指を離し、視線で何かを促した。

「――香穂子」

 呼ぶと、柔らかなものが唇の端に落ちた。
 思わず見開いた瞳に、接近した恋人の顔が一杯に映る。
 それを知覚した瞬間、何かが切れたような、潰れたような、壊れたような感じがした。
 不自由な体勢を反転させ、恋人を見下ろす。
 そして、先程は端だけが触れたものをぴったりと重ね合わせた。


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