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冴雫
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唐突に譲望SSSが書きたくなった。

コンビニデートとか可愛いよね!






 テレビで放送する番組が、夕方のニュースからバラエティーへと切り替わろうとする時間。
 居間でニュースを観ていた譲は、次の番組が始まるまでのCMタイムを持て余し、近くに置いてあった携帯電話を手に取った。
 そして、僅かな逡巡の後にメール作成画面を開く。
 見慣れたアドレスを呼び出すと、本文を入力する。

『今、大丈夫ですか?』

 送信し、特に興味もないCMを観ていると、バラエティー番組が始まる頃に返信が来た。

『ごめん。今からコンビニに行くんだ。帰ってきたらメールするね』

 メールを読んだ譲は、携帯電話を掴んで立ち上がる。
 自室に急いで戻ると、ハンガーにかけてあった上着を羽織り、財布を取り出して玄関に向かう。
 途中で「ちょっと出かけてくる」と言い置き、もどかしげに靴を履いて表へ出る。
 そこから更に門をくぐると、ちょうど望美が家から出てきたところだった。

「譲くん?」
「ああ、よかった。間に合いましたね」

 驚く望美に微笑みかけ、譲は胸を撫で下ろした。
 その様子を見て、望美は焦ったように譲の元に歩み寄る。

「メールって、急ぎの用件だった?」

 譲は、それにゆるく首を振った。

「いえ、特に用があってメールしたわけじゃないんです」
「よかった~」

 安堵したように笑う望美に、譲は謝罪する。

「驚かせてしまってすみません。俺もコンビニに行こうと思って」
「そうなんだ。私はシャーペンの芯切らしちゃって。譲くんは?」
「俺は特に用があるわけじゃないんですが……」

 え、と目を瞬かせる望美の視線から逃れるように、譲は眼鏡を直す仕種で顔を隠した。

「先輩を一人で行かせるのも心配でしたし」
「コンビニくらいなら大丈夫だよ。時間だってまだ早いんだし」
「はい。……でも……いえ、本当は、俺が先輩に会いたかっただけです」

 譲は、レンズ越しに真っすぐな視線を望美に向けた。
 それを受けた望美は、大きく一つまばたきをした。
 そして、頬を赤く染める。
 同じくらい顔を赤くした譲は、沈黙の落ちた空間を壊すように声を上げた。

「さあ、行きましょう、先輩」
「うっ、うん……」

 少し離れて歩き出した二人の距離は、歩みを重ねるごとに縮む。
 車が来ないか確認の為立ち止まった十字路で、手が触れた。
 弓を扱い固くなった譲の指先を、望美が掴む。
 くん、と引っ張るような仕種に、譲は顔を傾けて望美を見た。

「先輩?」
「……これも、デート……だよね?」

 瞳を揺らしながらの問いかけに、譲は意表を突かれたのか目を丸くする。
 しかし、すぐに柔らかい顔になった。

「……ええ」

 譲は、頷きながら望美の指先を握り返す。
 繋いだ指先に意識を向け、二人はそっと微笑んだ。
 相手のぬくもりに、幸福を感じながら。
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