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冴雫
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ふと吉羅さんの日焼けを想像しと萌えたのでSSS書いてみた。
いつものごとく尻切れトンボ。






 太陽がさんさんと輝く夏の昼時。
 香穂子は、星奏学院高等学校の理事長室を訪れていた。
 室内は空調が効いているが、窓からは強い日差しが侵入してきている。

「今日も暑いですね」
「ああ」

 頷く吉羅は、いつもと変わらずスーツをきっちりと着こなしている。

「……夏物とは言え、いつもきっちり長袖を着てて暑くないですか?」
「いや?」
「まあ、吉羅さんの半袖姿っていうのも想像しづらいんですけど」

 半袖を着た姿を想像しようと、香穂子は吉羅をまじまじと見た。
 しかし、上手く想像できなかったのか、しかめっつらになってしまった。
 吉羅はそれに少し片眉を上げる。
 怒っているようにも見える仕種だが、そこには笑みの気配が潜んでいた。

「私だって半袖くらい着るさ」

「でも、スーツ姿が多いからあんまり日焼けしなさそう……あれ?」

 香穂子は喋りながら、何かに気づいたように首を傾げた。

「なんだね?」
「この間も、衛藤くんと一緒にプールに連れて行ってもらいましたけど、吉羅さんって日焼け跡あんまり目立ちませんよね。衛藤くんはもう結構焼けてましたけど」
「桐也はボディボードをやっているからね。だが、私も少しは焼けているさ」

 吉羅はほら、といいながら時計を外して手首を曲げる。
 香穂子がそこに顔を近づけて、よくよく見ると、いつも時計をつけている部分がほかに比べて僅かに色が違って見えた。

「本当だ。でも、やっぱりわかりづらいですね」
「もともと肌の色は黒いほうだからね」

 へ~、などと言いながら、香穂子は吉羅の腕をもっとよく見ようと、彼の腕を両手で掴んだ。
 それに、吉羅は少し腕を引く。

「日野君、もういいだろう」
「えっ? あっ、すみません!」

 見るのに夢中でさして意識していなかったのか、香穂子は自分が吉羅の腕を掴んでいたと気づくと慌てて手を離した。
 赤く染まった頬を隠すように俯き、視線をさまよわせる。

「あの、お仕事の邪魔になっても申し訳ないですし、そろそろ帰りますね!」

 香穂子は、返事も聞かずに勢いよく立ち上がった。
 しかし吉羅は、悠然と座ったまま声をかける。

「待ちたまえ。――日野君、今週末の予定は?」
「特にない、ですけど」
「私はプールに行く予定なんだが、君もどうかね?」

 予定がない、と聞いた上での誘いは、逃げ道が封じられている。
 しかし、憎からず思っている相手からの誘いなのだから、香穂子に断るという選択肢は最初からないも同然だった。

「……ぜひ」

 笑顔で頷き、香穂子は踵を返した。
 部屋のドアノブに手をかけたところで、ふと振り向く。

「そういえば、衛藤くんはもう誘ったんですか?」
「いや。今回は、桐也を誘うつもりはないよ」

 つまりは、二人きり。
 吉羅の言葉の意味を理解した香穂子は、顔を赤くして、勢いよくノブを回した。





後書

この後、プールで香穂子が吉羅さんの日焼け跡意識してたら可愛いと思う!
吉羅さんって肌浅黒いから日焼けとかあんまりしなそうだけど。

でも、日焼け意識してちらちら見ちゃって、そしたら吉羅さんの体つきのよさとか改めて意識しちゃって、しかも二人きりでのプールデートだからますます異性を意識しちゃって、と意識することのスパイラルとか!
アンコールED後の、あの微妙な関係で相手を意識するのがいいですよね…!
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