前にネタだけ考えてたのを発掘してみました。
埼玉なので揺れ以外の被害はありませんが、こうも余震が続くと精神的にちょっときついですね。
こんな時こそ気を紛らわそうと妄想に走る。
埼玉なので揺れ以外の被害はありませんが、こうも余震が続くと精神的にちょっときついですね。
こんな時こそ気を紛らわそうと妄想に走る。
休み明けの朝。
まだ人の少ない時間に登校した金澤は、校門前で香穂子を見つけ、後ろから声をかけた。
香穂子はその場に立ち止まり、振り向くと笑顔であいさつをする。
「おはようございます、金澤先生」
「ああ、おはようさん」
その時突風が吹き、香穂子は髪を押さえ、目を閉じた。
その指先にふと目を惹かれ、金澤は気づいた事実に思わず頭を掻いた。
「あ~、日野。さすがに、その色のマニキュアは学校ではまずいんじゃないか?」
金澤の視線の先、香穂子が自らの指先を見る。
爪は、淡いながらも桜色に染まっており、明らかにマニキュアが塗られているのだとわかる。
楽器演奏に関わる爪を保護する為、透明なマニキュアを塗る生徒は音楽科におり、それは許可されている。
しかし、着飾る為のマニキュアはさすがに咎められるだろう。
香穂子はマニキュアを塗ったままだったことを忘れていたようで、顔をしかめている。
「……あ~。落とすの忘れてました」
香穂子はどうしよう、と零し、今から家に戻ろうか、除光液を持っているか人がいるか尋ねるか、まだ自宅にいるだろう友人に持ってきてもらおうか、解決策をぶつぶつと呟きながら模索していた。
それを耳にした金澤が、俯きがちな香穂子の頭にぽんと手を置いた。
「確か、職員室に除光液があったはずだから、借りてきてやるよ」
あっさりと示された方法に、上げられた香穂子の顔がぱっと明るくなる。
「いいんですか!?」
「ああ。ほら、ほかの先生方にばれないように、お前さんは先に準備室行ってろ」
「はーい。お願いします!」
金澤が追い払うように下に向けた手を振れば、香穂子はぺこりと頭を下げてから走り去って行った。
職員室から、特に理由を聞かれることもなく除光液を持ち出した金澤は、音楽準備室へといつもよりもせかせかとした足どりで向かった。
音楽室が視界に入る位置まで来ると、香穂子が扉の前にいるのが見えた。
「先生!」
金澤に気づいた香穂子がほっとしたように息をつく。
「あー、悪い悪い。鍵がなきゃ入れんよな」
金澤はポケットに突っ込んでいた二つの鍵を取り出し、音楽室の扉を開けた。
「ほれ、入った入った」
香穂子に続いて金澤も室内へと身を滑り込ませ、扉を閉めると大きな歩幅で香穂子を追い抜く。
そして、音楽準備室の鍵も開けて香穂子を招き入れた。
荷物を置いて、除光液を香穂子に手渡す。
「ほら、除光液。換気しろよ~」
「はい! ありがとうございます! ティッシュ使わせてもらいますね」
除光液を受け取った香穂子は、まず窓を開け、それから部屋にあったティッシュ箱へと手を伸ばした。
椅子に腰を落ち着け、バッグとヴァイオリンケースを脇に置く。
拍子に垂れた髪の毛を掻き上げた香穂子の指先。
それが、金澤の目を惹きつけた。
淡く染まった爪先が添えられた香穂子の顔が、いつもよりも大人びて見えたのだ。
香穂子がマニキュアを落とし始め、除光液特有のツンとしたにおいが漂ったのを心の口実に、金澤は手元にあった雑誌で空をパタパタと仰ぎ、顔の熱を冷ます。
そうしながらも、先程の光景が目に焼き付き、垣間見える香穂子の顔を意識してしまう。
よく見る仕種なのに、やたら気になったのは、マニキュアのせいだけなのだろうか。
日々成長を遂げる少女を前に、金澤は複雑な感情を抱えた。
その想いを飲み込むべくコーヒーを煎れようと、金澤は立ち上がってマニキュアを落とし終わった香穂子と共に部屋の換気に努める。
10分後。
音楽準備室は、コーヒーの薫りで満たさていた。
金澤は香穂子の短く切り揃え、手入れをしただけの爪を見ても、先程のように何かをくすぐられる感覚を抱かないことに、そっと安堵の息を漏らした。
後書
金やんが香穂子の「女」を意識するのっていいなと思いまして!
なんか、それに急かされて焦れつつ、手放したほうがいいんじゃないかとかもだもだしたり。
まあ、このSSS内ではそこまで悩んでませんが。
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更新履歴ブログ「冴雫」。たまに小話か萌え語りカテゴリでSSS投下。
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