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冴雫
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昨日は、ゆきさん主催の吉羅誕絵チャに参加させていただきました!

ゆきさん、そしてご一緒させていただいた方、ありがとうございました!
本当に楽しかったです。

そして、その中で出た話に萌えまして!
そこから妄想したSSSを思わず書いてしまいました。

明日にでも、ゆきさんのサイトなどへのリンクを貼らせていただきます!

SSSは追記から。







 ようやく、コンクールで手にした賞。
 些細なものではあるが、吉羅の言う「著名なヴァイオリニスト」に一歩近づいた証だ。
 その嬉しさに、コンクールが終わると着替えるのももどかしく、衣装に上着を羽織っただけの格好でタクシーに飛び乗る。
 行き先は星奏学院高等学校。
 香穂子自身が数年前まで在籍していた、吉羅が理事長を勤める学校だ。

 タクシーで釣りを貰う暇すら惜しく、「お釣りはいりません」と告げると慌ただしく車を出て門の前に降り立つ。
 敷地内に一歩足を踏み入れると、微かなメロディが聴こえた。
 ヴァイオリンが奏でる「ジュ・トゥ・ヴ」。
 かつて、香穂子が高校二年の時に聴こえてきたものと同じ響きだった。
 その時のことを思い出し、早足で歩きながら音楽科の屋上を見上げると、そこにはあの時と同じ人がいた。
 香穂子が今、一番会いたい人。
 細かい表情を読み取ることなどできないが、斜め下を向き、香穂子に気づく様子はない。
 それでも、その姿を目にした香穂子は弾かれるようにして走り出した。
 足に絡まるスカートで時折バランスを崩しながらも転倒することなく、音楽科校舎内の屋上へと続く階段へとたどり着く。
 階段の上方をきっと見つめ、大きく息を吸い込むと、香穂子は階段を駆け上がり始めた。
 二階、三階を通過し、さらに踊り場を曲がると屋上の扉が見える。
 軽やかな足音を響かせながら階段を上りきった香穂子は、重い扉を前にして目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。
 煩い心臓をおさえながら、そっとノブに手をかけ、捻る。
 ギギ、と少し耳障りな音を立てながら開いた扉から外に出ると、すぐに吉羅が目に入った。
 先程、校門前から見かけた時と同じ位置にいる。
 人が来たことにも気づいていないのか、気づいていて気にしていないのか、空を見つめる吉羅から一旦視線を剥がすと、香穂子は極力音を立てないようにして扉を閉める。
 そうしてから再び吉羅を見ても、やはり変わりはないままだった。
 香穂子は、ヒールが地面を叩く音を忍ばせながら吉羅の後方へと回り込んだ。
 未だ乱れたままの息を整えながら、少しだけ近づけた気がする背中に声をかける。

「――吉羅さん」

 呼び名に反応し、一瞬その背中を強張らせてからこちらを振り向く吉羅の動きが、やけにゆっくりと見える。
 それを香穂子は、堪えきれない喜びを載せた満面の笑みで待ち構えた。



ネタ元:ゆきさん主催 吉羅誕チャット
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