忍者ブログ
Admin*Write*Comment
冴雫
[258]  [256]  [255]  [254]  [253]  [252]  [251]  [250]  [249]  [248]  [247
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

twitter萌え語りの

>あ、金やんもいいな!在学中は互いに教師だから、生徒だから、って言えなくて、卒業・卒業後に言う勇気もなくて、気持ちを抱えたまま、たまたま一緒に飲んだら香穂子が酒の勢いで「実は好きだったんですよ~」とか冗談めかしてわざと過去形で言うけど、金やんが本気で告白返し、とか。

ってのの妄想をしてた、はず…。
なんだけどちょっとずれた。
まぁ、前フリイベントってことで。

今度また続き書きたい。







すっかり暗くなった横浜の住宅街を、金澤と香穂子が歩いていた。

 学院からの帰り道に遭遇した吉羅に連れられ、食事を終えた後、家路に着く香穂子を金澤が送っているのだ。
 店からタクシーを使っていたのだが、住宅街の入り口で香穂子が「ここでいい」と車を止めてしまったのだ。
 そのまま一人で降りようとした香穂子に続き、運転手に料金を渡した金澤が地に足をつけた。

 驚く香穂子の目の前から、タクシーが走り去る。

「……タクシー行っちゃいましたよ?」
「女生徒を暗くなった住宅街にぽいと放り出せるわけがないだろ。俺がお前さんを連れ出したようなもんだしな。ほれ、行くぞ。お前さんの家はあっちのほうだったか?」

 見当をつけた方角にすたすたと歩き始めた金澤の後を、香穂子は慌てて追った。

「あ、こっちのほうが……」

 数十メートル行ったところで、香穂子は近道を見つけ、小さく声を上げた。
 それに反応した金澤が、立ち止まって首を傾げ、香穂子を見下ろす。
 その双眸がやけに柔らかい気がして、香穂子は思わず言葉を飲み込んだ。

「どうした?」
「……なんでもありません」

 一緒にいる時間が短くなるのが残念な気がして、香穂子は近道のことを自分から言い出すのは止めることにした。
 金澤の横に並び、足を進める。
 静かな住宅街に二人の足音が響く。
 沈黙を破ったのは、金澤。

「――今日は付き合わせちまって悪かったな」
「いえ! 楽しかったです。二十歳になったら、改めてあんなお店に行ってみたいな」

 香穂子は首を振り、先程までいた店を思い浮かべた。
 高校生である香穂子には幾分敷居の高い店だったが、だからこその憧れがある。

「成人したら、な」
「はーい」

 基本的には、酒を飲む為の店だ。
 金澤の注意に素直に頷いた香穂子は、向き直った視線の先に自宅を見つけた。
 金澤と別れがたく、歩みが自然と遅くなる。
 速度が落ちたことには気づいているだろうに、金澤は何も言わずに香穂子にペースを合わせてくれている。


「……成人したら、先生があの店に連れていってくれませんか?」
 香穂子はふと浮かんだ願望を口にした。

「はぁ?」
「駄目、ですか?」

 目を見張った金澤の口から零れ落ちた疑問符に、香穂子はしゅんと俯いた。
 その頭に、大きな手が置かれる。

「……覚えてたらな」

 確約ではないが、希望のある約束。
 ごまかしのようにも聞こえる言葉だが、金澤はそこに本気を込めたし、香穂子もそれを感じとった。
 途端に、香穂子の顔は明るくなる。

「はい! 私、絶対に忘れませんからね」

 宣言を終えたのは、ちょうど香穂子の家の前。

「あ~、わかったわかった」
「返事は一回ですよ!」
「わかったよ」

 金澤の返事を聞き、満足げに頷いた香穂子は、後ろを振り向き振り向き、家へと入って行った。
 扉が閉じたのを確認すると、金澤は方向転換をして駅への道を歩き始める。

 一人分しか響かない足音を聞きながら、金澤は自らの頭の中のスケジュールに、三年後の予定を書き込んだ。
PR
  • ABOUT
更新履歴ブログ「冴雫」。たまに小話か萌え語りカテゴリでSSS投下。
  • ブログ内検索
  • アーカイブ
Copyright © 冴雫 All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]