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冴雫
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拍手くださった方、ありがとうございました!



と、いいつつ、本日拍手を撤去しました。
拍手はとっても嬉しいんです。
励みになります。
だからこそ、気にしすぎてしまう時があって…。
気にしすぎてる自分が面倒なので、しばらく外します。
また、気分でつけたり外したりすると思いますが。



あ、サイトの作品数数えたら、99つでした。
前後編とかはバラバラ、「La Passegiata」や「SSSまとめ」なんかはまとまったので一つとして。
要は、作品数というかページ数?
数えたら意外と量があった気もしますが、まだまだ少なく、充実しているとは言い難いですね。
最近、遙かとコルダが大好きだということを再実感したので、もっともっとお話を書いて、サイトを充実させていきたいと思います。



と、盛大に話題が逸れましたが…。
今回は金日のハロウィン話を載せたかったんです。
お話は追記から。







 10月中旬。
 人もまばらになった放課後、日野が音楽準備室を訪れていた。
 仕事をする俺に向かい、言葉を発する。

「ねぇ、先生」
「どうした?」

 書類から顔を上げて、日野の話を聞く姿勢を示す。

「先生の白衣、貸してもらえませんか?」
「白衣?」

 日野が求めているものが意外で、語尾が上がる。
 思わず目を見開き、自らの身を見下ろした。
 楽だからという理由で、音楽教師なのに纏っている白衣。
 これを貸せというのか。

「はい。ハロウィンの仮装で、フランケンシュタインをやることになったんです」

 フランケンシュタイン。
 頭にネジが刺さり、顔に傷がある大男の怪物のことだろうか。
 おぼろげなイメージが頭に浮かび、日野に重なる。
 ……想像しがたい。

「女子がやるにしては変わってるなぁ」
「くじ引きの結果です」

 むむ、と眉間に皺を寄せ、唇を尖らせる。
 そんな表情すら可愛く見えるのは、なんとかの欲目か。

「へぇ。ところで、フランケンシュタインは白衣なんて着てたか?」

 ふと、純粋な疑問が湧き上がる。

「あれ、着てませんでしたっけ?」
「囚人服みたいなのじゃなかったか?」

 自分の記憶もあいまいだが、あまり白衣を着ているイメージはない、ような気がする。

「うーん……。前にちらりと見かけたアニメで、同じ名前のキャラクターが白衣着てたんです。だから、白衣でいいかなって」
「ま、いいんじゃないか。フランケンシュタインだってわかればいいんだしな」

 それには、ネジと傷があれば充分だろう。
 さて、白衣を貸すのは別にいい。それくらいなら、対外的にも問題はないだろう。
 だが、ぶかぶかの白衣を着た日野が衆人の目に晒されるのかと思うと、自らの眉間にも皺が寄るのを感じる。

「……貸してもいいが、一つ条件がある」
「なんですか?」

 ことり、と首を傾げる様は、やはり可愛らしい。

「俺にも仮装を見せてくれや。写真で、ってのはなしだぞ」
「……わかりました」

 一瞬言葉に詰まったようだが、すぐに頷く。
 少し、ハロウィンが待ち遠しくなった。





 ハロウィン当日。
 やはり人気のなくなった放課後。 
一人きりの音楽準備室に、鍵がかかっている扉をノックする音が響く。

「金澤先生?」

 扉を開ければ、そこにいたのは小さな怪物。
 どうなることかと思ったフランケンシュタインの仮装だが、意外にも――いや、意外ではないかもしれないが、可愛らしい印象を与えていた。
 ぶかぶかの白衣を着る、というよりは着られていて、額から耳の下にかけて縫合の跡。頭には、大きなネジのレプリカが取り付けられている。

「……ま、入れや」
「はーい」

 日野を招き入れ、扉を閉める。
 その前に思わず音楽室の様子を伺って、誰もいないのを確認してしまった。
 そんな自分の行動に、密かにため息をつきながら鍵をかける。
 振り返ると、日野は既に白衣を脱いで椅子に腰掛け、持参していた鞄をガサガサと漁っていた。
 その光景に幻が加わっているように見えて、瞬きを繰り返し、目を擦る。
 しかし、幻は消えない。
 背もたれのない椅子に座った日野の腰から、尻尾が生えている。
 しかも、上半身のあちこちに手をやってごそごそしていたかと思うと、頭部には耳、喉元には鈴付きの首輪まで登場した。
 ネジと縫い目は、いつの間にか取り去られている。
 そこにいたのはもう小さな怪物ではなく、黒猫だった。

「……お前さん、今日、黒猫の仮装もしてたのか?」

 こんな格好をすると知っていたら、止めていた。
 しかし、日野は首を横に振った。
 その拍子に、鈴がちりんと音をたてる。

「してませんよ?」
「じゃあ、その格好はなんだ」

 言葉尻と眼差しが少しきつくなるのを自覚しながらも、止めることができない。
 日野はそれにまだ気づいていないのか、椅子から立ち上がるとくるりと回ってみせた。

「友達に借りたんです。せっかく、先生に見せるんですし……」
「だからって、なんでその格好なんだ?」

 約束したのは、フランケンシュタインの格好だけだ。
 黒猫の格好も見ることができたのは嬉しいが、理由がわからない。
 問われたことに驚くように、日野は目をぱちくりとさせた。

「先生、猫好きでしょ?」
「猫は好きだが……」

 だから猫の格好なのだろうか。
 安直だ、と言おうとした瞬間、目の前に日野の指先を丸め手が突き出される。
 招くようにその手を動かし、上目遣いで首を傾げる。

「『にゃ~ん』」

 さらに、猫のように身を擦り寄せてきた。
 すり、と軽く触れて離れる躯。
 椅子に戻ると、近くにかけてあった白衣に再び袖を通す。

「ふふ、先生の白衣~」

 嬉しそうに、白衣の前部分を合わせる日野からは相変わらず耳と尻尾が生えている。


「……お前さん……」
「はい?」

 きょとり、とこちらを見上げる瞳は、ただただ純粋。
 煽られる諸々をぐっと堪える。
「……いや。……『Trick or Treat』」

 しかし堪えきれず、口から言葉として転がり出た。
 その言葉に、日野はしまったというような顔をした。

「私が言おうと思ってたのに……! お菓子、教室に忘れちゃって。後ででもいいですか?」

 拝むように合わせられた手ごと、身を捕らえる。

「……駄目だ。お菓子がないならいたずら、だな」

 左腕で腰を抱え、右手で顔を固定する。
 重ねた唇から伝わる甘さに、これはTrickとTreat、どちらを与え、与えられているのかと疑問になる。
 しかしその疑問すら、甘いいたずらの前では溶けて消えた。
 どちらにしたって、甘いことに変わりはないのだから。





後書

この話は、
サイト掲載の作品数が99!→100作記念にできたら何かやりたいな→ハロウィン近いよね→吉日ハロウィン書きたい→「ソウルイーター」のシュタインの格好させたいな→中の人繋がりなら吉羅だけど、吉羅は仮装しなさそう→香穂子が仮装→白衣は金やんに借りる→金日ハロウィン
という、どんどん擦れた思考の果て。

なので、香穂子の仮装はシュタイン博士!
シュタインコスといい黒猫仮装といい白衣といい、やりたいこと詰め込んだだけです。
楽しかった!
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