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冴雫
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なんか、衝動的に話が書きたくなった。
って訳で金日のSSS。

最初はギャグとか書きたかったのに、意味不明な話に。
雰囲気小説ってこんな感じ?ってものになった。
あれ、こんな感じ?っていうか、まんま雰囲気小説かも。

タイトル通り、くるくる回ってる香穂子が書きたかっただけ。
時系列とか考えてすらないよ!無印金澤ED後ってくらい。

でも、楽しかった。
一発書きって気楽だよね。






 香穂子は音楽準備室の椅子に座っていた。
 いつもは金澤が座っているその椅子は、いかにも教職員がよく使う、ローラーがついて座席が回転するタイプのもの。

 椅子は、定位置の机前からわざわざ引き離して、部屋の中央、障害物のあまりないところへと持ってきていた。
 ぎしり、と音をたてて背もたれに身を預ける。上を向けば、目に映るのは代わり映えのしない天井。
 その一点を見つめたまま、香穂子は足で地を蹴って、椅子をくるくると回した。
 両手をまるで飛ぼうとするかのように広げて、尚も回る。

(あ、ちょっと気持ち悪くなってきたかも)

 もどかしさの塊が喉につかえる。それでも欲求は止まらず、足は機械的に地面を擦る。

(何、してるんだろう。私)

 こんな行為をしている理由が、自分でもわからない。
 ただ、衝動に駆られたのだ。

 もやもやを晴らすように、一層強く床を蹴りつける。
 途端に、ぐらりとバランスを崩す椅子、そして身体。
 身を守る為に突き出しそうになった掌を、慌てて胴に引き寄せる。指を怪我なんてしたら、皆――特に月森に怒られてしまうし、それ以上に心配をかけてしまう。香穂子自身も、ヴァイオリンの練習ができないのは嫌だった。
 せめて少しでも被害を抑えようと、咄嗟に身を捻る。

 背中側から冷たく固い床に衝突するはずだった香穂子の体は、温かな柔らかいものに受け止められた。
 上から落ちてくるのは、大きな吐息。

「まったく、お前さんは何やってるんだ?」

 触れた箇所から振動まで伝わる声は、一瞬で香穂子が予測した通りの人のもので。
 香穂子は受け止められた姿勢のまま、金澤に背中を預けた。先程まで座っていた椅子などより、よっぽど居心地がいい。
 ぽんぽんと頭を叩く掌と、香穂子の体を包み込むぬくもりに、理由のわからない不安が溶けていくような心地がする。

「――先生」
「うん?」

 香穂子の頭を撫でるのとは反対の、椅子を支えている手に指を絡める。

「……もう、ちょっとだけ」

 このままでいていいですか。ぽそりと呟いて、返事を待たずに背後に体重をかける。
 金澤の胸に寄り掛かりながら、先程見つめていた、天井の一点を見上げた。
 やはり、代わり映えのしない風景。なのに、先程のよくわからない衝動はさっぱり消えていた。

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