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冴雫
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「あんたにしてはまともすぎて怖いけど。」後編です。

引き続き、パロとかキャラ崩壊系とかが苦手な方はご注意ください。












 そこへ、再び新しい声が響く。

「なんだか楽しそうだね」

 家から少し離れたところに立っていたのは、頭からマントを被った長髪の男性。
 笑みを載せた顔には、白雪姫を瞳に捕えるとすぐに疑問が浮かんだ。

「おや、君は?」
「あっ、あの、私は白雪と言います。この森で迷ってしまって」
「そうなんだ。僕はユノキ。ヒハラの友人で、近くに住んでいるんだ」

 白雪姫の答えに、得心したように頷くと、青年は自らも名乗った。
 そして、腕に下げていた籠に手を伸ばす。

「ああ、君、フルーツは好きかな。よければ一つ、どうぞ。近くに住んでいる女の子が、自分で育てた林檎を差し入れしてくれたんだ」

 みずみずしく、今にもかぶりつきたくなるような赤林檎が、白雪姫に向けて差し出される。
 礼を言って受け取ろうとした白雪姫の前に、影が落ちる。
 目の前に立っていたのはカジだった。

「待って、僕が毒味をするから」
「おや、カジくん。やだな、毒味だなんて。物騒だね」

 カジとユノキは笑顔で会話を交わしているが、どこかうすら寒い空気が周辺に漂う。

「ははは、やだなぁ。彼女に、どこの誰のものとも知れないものを、食べさせるわけにいかないじゃないですか。下手なものを口に入れさせるわけにはいきません。彼女が食事をするなら、この僕が厳選した新鮮食材を彼女の好みに合わせてしっかり調理します。そうだ、僕が毒味するまでもなく、彼女の好みの林檎を新しく用意すればいいんだよね」

 カジの言葉は、既に会話ではなく自らの世界での妄想を語っていた。
 彼を戸惑いと生温かく見つめる人々の瞳の端に、脇からすっと現れた黒い影が映り込む。

「アドリブが長いよ」

 ほかの登場人物に比べると、貴族風の衣装を身につけた男性。
 衣装と髪は漆黒で、腕を組んだ様は威厳を感じさせる。
 気配なく現れた為、真後ろから突然声をかけられたツチウラは大袈裟な程に驚いてしまう。

「うわあぁぁっ、り、理……じゃない、キラ王子。あんた、なんでこのシーンに出てきてるんですか。出番はもっと先でしょう」

 しかし、気性なのかツッコミは忘れない。
 そんなツチウラの叫びに驚いたのは、黒衣の男性ではなくヒハラだった。

「なっ、なんだよツチウラ、びっくりした~」
「すみません、キラ王子。思わぬことで長くなってしまって」

 その驚愕すらフォローするように、ユノキがにこやかな表情のままさらりと謝罪した。
 王子はそれに首を縦にも横にも降らぬまま、疑問を口にする。

「いや。どうやら、白雪姫の好みの林檎の話をしているようだね。。ずいぶん白熱しているようだが……アドリブではなく、台本が変わったのかね?」
「違います」

 王子の勘違いをツチウラはすぐさま否定した。

「ならば、早く本筋に戻したまえ。加地君、柚木君。君達は一体何をしているのかね。話が進まないだろう」

 王子は、言い争う……もとい、一方的にヒートアップしているカジと、それに対峙しているユノキに声をかけた。
 その言葉にはっと意識を取り戻したカジは、ユノキと同じようなにこやかな笑みを見せながら、手で森を示す。

「ああ、吉羅理……いえ、キラ王子。白雪姫は怪しげな林檎を口にしたりしませんから、これ以上貴重な時間を割いていただかなくて結構ですよ?」
「怪しげだなんでひどいな。食べてもらわなければ、話が進まないだろう?」

 王子に対してのカジの言葉に、ユノキが反応する。
 しかし、カジはそれにも反論を繰り広げる。

「でも! それを食べたら、王子様役は何故か吉羅さんなんですよ! この後のシーンがなんだかわかっているんですか、柚木さん」

 たっぷり十秒分の沈黙が落ちる。
 沈黙を破ったのは、ユノキの溜め息。

「……仕方ないね。この林檎は君にあげるよ」

 手にしていた林檎を、カジに向けて差し出す。

「ありがとうございます。あとで、しっかり処分しておきますね」
「君が食べてもいいんだよ?」

「遠慮しておきます」
「ふふふ、それは少しひどいんじゃないかな?」
「ははは、そうですか?」

 二人は、怪しい笑みを深める。

「ふふ、ふふふふふ……」
「はは、ははははは……」

 森には、声音だけは爽やかな、不気味な笑い声だけが響いていた。





「………………私、断固裏方で」
 香穂子は、加地の話を聞きながら、絶対に舞台に役では立たないとの決意を固めた。
 天羽もそれに同意する。

「うん。私もそれが無難だと思う。全然まともな案じゃなかったね……」

 少女二人の視線の先で、加地は外の風景を眺めながら幸せそうな顔をしていた。







後書

白雪姫パロに始まり、いろいろと小ネタが仕込んであります。
下のほうに一応元ネタを書いておきますね。
何か抜けてるかもしれませんし、元ネタは正式名称ではありませんが。

加地君と柚木先輩のキャラクターが少し壊れていてすみません。
笑言十題なので、たまにはいいかな~と。

本当は天羽ちゃんと冬海ちゃんを友人役、衛藤君を猟師役で登場させてみたかったんですが、これ以上長くなるのはと思って断念。

香穂子3年のクラス劇に、加地君と土浦君はともかく何故教師の金やんに理事の吉羅さん、卒業した柚木先輩や火原先輩、留学してそうな王崎先輩や月森君、他学科他学年の志水君がいるのかは突っ込んじゃ駄目です。
ギャグですから。

書いてる私だけが楽しかったんじゃないかという疑惑が持ち上がる作品ですが、見てくださる方にも少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。










・「3Bが斬ル!」
・コルダ無印オープニングイベント
・コルダ無印柚木恋愛イベント第一段階・第二段階
・「ネオロマンス15thアニバーサリー」コルダドラマ部分


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