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冴雫
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笑言十題「あんたにしてはまともすぎて怖いけど。」ようやくアップです!

男性陣は衛藤君除くオールキャラ。
でも、やっぱり吉羅さん寄り?

いろいろパロってるので、苦手な方はご注意。
中の人ネタとか、メディアミックスネタなどがあります。
あと、キャラ崩壊もちょっと注意。

携帯電話からだと字数制限に引っ掛かってしまったので前後編。
まずは前編から。

大丈夫そうな方は追記からどうぞ。















 香穂子と天羽は、カフェテリアからすっかり秋色に染まった景色を眺めながら、雑談を交わしていた。

「あんたのクラス、今年は何やるの?」

 話題は、高校生活最後の文化祭について。

「劇。天羽ちゃんのクラスは?」「喫茶店。劇、何をやるかはもう決まったの?」
「まだだよ」

 香穂子のクラスでは、劇をやるということまでは決定したが、何をやるかは意見が分かれしまったのだ。
 早く決めないと準備もあるのに、と香穂子はため息をつく。

 そこへ、今年も香穂子と同じクラスとなった加地が話に割り込んできた。

「白雪姫なんてどうかな? もちろん、日野さんが白雪姫で」
「で、自分は王子様?」

 昨年の「ロミオとジュリエット」の前例があるだけに、天羽は茶々を入れた。
 しかし、加地はそれに首を横に振る。

「それもすごく魅力的だけど……。日野さんが白雪姫をやるんだったら、僕は小人に立候補するよ」
「小人?」

 意外な言葉に、香穂子も天羽も目を丸くした。

「意外と普通、だね」
「うん。だって、白雪姫に家事をさせるわけにはいかないでしょう? 小人だったら白雪姫と一緒にいられるし、そもそも毒林檎なんて食べさせないよ」

 だが、続いて述べられた理由に半眼になる。

「……はあ。さすが」
「加地くん、それじゃあ白雪姫のお芝居にならないよ」

 苦笑しながら、香穂子と天羽は加地の言う「白雪姫」を思い浮かべる。

「たまには、変わった趣向の『白雪姫』もいいと思わない? 例えば……」






 こじんまりとした可愛いらしい家。

 中にでは、眼鏡を掛けた柔和そうな男性の小人が一人、紅茶のカップを傾けていた。

「今日も、いい天気だねぇ~」

 そこへ、ドタバタと荒い足音を響かせて、金髪の青年が駆け込んで来た。

「おっ、オウサキさん、大変です!」

 いかにも大事だ、とばかりに慌てている青年とは対照的に、オウサキと呼ばれた、眼鏡をかけた男性はお茶の時間を楽しむ。

「やあ、カジ君。そんなに急いで、どうしたの?」
「もう、お茶なんて飲んでる場合じゃないですよっ!」

 それに焦れたのか、カジと呼ばれた青年はオウサキの手にしていたカップを奪い、卓上に荒く下ろした。
 しかし、オウサキは気を悪くした様子もない。
 謝意を口にし、首を傾げた。

「そうなんだ、ごめんね。何かあったのかな?」
「ええ、もう大変なんです! 一大事なんですよ! 僕の天使を、ようやく見つけたんです!」

 オウサキの疑問に、カジは意気込んで答える。
 かと思えば、興奮に輝いていた瞳がどこか遠くに思いを馳せるように、虚空を見つめた。

「ああ、今でも聴こえてくるようです。神様に愛されていることを証明するかのように、金色に光り輝く弦から紡がれる優しく、そして、どこまでも純粋で無垢な、彼女のヴァイオリンの音色が……」
 胸に手を当て、自己の世界に陶酔しきっているカジに、オウサキはにこやかに相槌を打った。

「そうなんだ。よかったね。」
「はい!」

 満面の笑みで頷いた加地は、すぐに先程の慌てた表情を取り戻す。

「ああ、実は、その彼女はこの森で迷ってしまっているようなんです」
「それは大変だね。ひとまず、この家に案内しようか」
「ええ! 実は、ここに来てもらえるよう、道すがら楽譜を落としてきたんです。上手くいけば、そろそろ……」

 カジの言葉に重なるように、扉をノックする音が響いた。

「こんにちは。どなたか、いらっしゃいますか?」
「来た! はーい、今行きます!」

 先程とは打って変わって、カジは軽やかな足音を響かせながら入口に向かった。
 扉を開く前に深呼吸をして息を整えると、顔に爽やかな笑みを浮かべてノブをそっと引く。

 緑色の瞳に、林檎のように赤い髪と頬の少女が映った。
 少女は、片手にはヴァイオリンケース、もう片手には数枚の楽譜携えていた。

「あの、この楽譜がこちらの家まで続くように落ちていて。持ち主の方をご存知ですか?」
「これは僕のなんだ。ありがとう。お礼に、お茶を飲んでいかない?」

 作戦が上手くいったと心中で自らに喝采を送りながら、カジはさらりと少女を室内に誘った。
 しかし、少女は首を振って申し出を辞退する。

「いえ、落とし物を届けただけですから。あ、道をお聞きしてもいいですか?」
「うん、勿論。だけど、この森はわかりづらいから、僕が行きたいところまで案内してあげるよ」

 誘いを断られるも、少女の控えめな態度にカジの好感度は上がる一方。
 めげずに、次の誘いをかける。

「えっ、でもご迷惑じゃ……」

 躊躇いを見せる少女に、カジはにこりと笑ってみせた。

「楽譜を届けてもらったお礼、だよ。僕はカジ。よろしくね」
「私は白雪って呼ばれてます」

 名乗ったカジに、少女も顔を綻ばせて名前を明かす。

「白雪……。君の雪のように白い肌に似合った、素敵な名前だね」
 カジが甘い空気を漂わせるが、それはパタパタという足音によって打ち砕かれた。

「ただいま! あ~、おなか空いちゃった。カツサンド食べたいな。カジくん、お昼の用意できてる? ……って、あれ、女の子? ツチウラ、大変だよ! 女の子がいる!」

 元気な声と同時に視界に飛び込んできたのは、明るい緑色の髪。 白雪姫の姿を見て、慌てた様子で後ろを振り向く。
 それに応えるように姿を現したのは、深い緑色の髪の青年だった。

「え?」

 頭を掻きながら接近してきた、ツチウラと呼ばれた青年は白雪姫の姿を見ると目を瞠った。

「……マジかよ。ひとまず落ち着いてください、ヒハラ先輩。相手のほうが驚いてしまっています」
 しかし、すぐに落ち着きを取り戻して騒いでいるほうの青年に声をかけた。

 その言葉で白雪姫が驚きに目を瞬かせているのに気づいたのか、明るい緑色の髪の青年は額に手を当ててから母音を発してから謝罪を口にする。

「あ~、ごめんね、驚かせちゃって。俺は……」

 青年が名乗りを上げようとした時、彼の背後から涼やかな声がその場の空気を両断するような鋭さをもって突き付けられた。

「……そこを通してくれないか」

 声と同じく鋭い視線に、自らが入口を塞いでしまっているのだと気付いた白雪姫は慌てて体を横に移動させる。

「あっ、ごめんなさい」
「失礼」

 白雪姫の言葉に反応もせず、できた隙間にするりと入り込み、遠ざかってゆく水色の髪。
 ほかにも何か気に障ることをしてしまったのか、と愁眉をみせた白雪姫に、その場に残った三人が執り成しの言葉をかける。

「……今のはツキモリ。あいつはいつもあんな態度だから気にするなよ」
「そうそう。ツキモリも、もうちょっと愛想よくすればいいのにね。あ、二人の紹介をするね。こっちがツチウラ。で、こちらがヒハラ先輩。ツチウラ、先輩。彼女は白雪さん。森で迷ってしまったらしくて……」
「白雪ちゃんって言うんだ。よろしくね!」
「ま、よろしく」
「はい、よろしくお願いします」

 自己紹介を終えると、場が暖かい空気に包まれる。
 そこへ、再び新たな人物が登場した。

「おいおい、何入り口でたむろしてるんだ?」

 今度登場したのは紫がかった銀色の髪を持つ男性。
 緩く波打つ髪を、後ろでひとまとめにしている。
 間延びした声に応えたのは、玄関先にいるメンバーではなく森からひょっこり出てきた少年。

「……はい」
「シミズ。お前のことは別に呼んでない」

 男性は呆れたように、クリーム色の髪の少年に声をかけた。
 少年は不思議そうに首を傾げる。

「あれ? 呼ばれた気がしたんですけど……。すみませんでした、カナガワ先生」
「俺はカナザワだぞ」
「あ、あの……」

 呑気とも言える二人のやりとりに、入口に人が固まっている原因となった白雪姫は声を上げた。
 途端、五つの視線が彼女に向く。
 最初に口を開いたのはヒハラ。

「カナヤン! この子、道に迷っちゃったんだって。白雪ちゃん、こっちの髭生やしてるのがカナザワ先生。で、もう一人がシミズくん」
「……はぁ、そうなんですか」
「あ~、この辺わかりづらいんだよな。災難だったな」
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