忍者ブログ
Admin*Write*Comment
冴雫
[201]  [200]  [199]  [198]  [197]  [196]  [195]  [194]  [193]  [192]  [191
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

調子に乗って本日二作目。
先程と同じく「笑言十題」から「おもむろに電子辞書を取り出して」で衛藤×香穂子です。
正確に言うと衛→日/衛←?日から衛×日かな。

そして、先程と同じく携帯投稿なままなので、折り畳んでいません。
折りたたみました。
諸々ご注意。











 五月の連休明け。
 放課後に音楽科屋上へと向かった衛藤は、一人ベンチに座る香穂子を見つけた。
 声をかけ、隣に座った途端に投げかけられたのは、脈絡も突拍子もない言葉。

「ねぇ、衛藤くん。『Like』と『Love』の違いってなんだと思う?」

 衛藤は驚きのあまり、口に含んだばかりのジュースで噎せてしまう。

「はぁ? なんだよ、突然」

 からかっているのかと香穂子の顔を見るが、至って真剣な表情をしている。
 答えを求める瞳から目を逸らし、衛藤は鞄を漁った。
 目的の物を捜し当てると、香穂子の目の前に差し出す。

「……なに、これ?」

 鼻先に付くほどの勢いで差し出された物に焦点が合わず、香穂子は問い掛けを発した。
 近すぎることに気付いた衛藤は、それを自らの胸元に引き寄せると蓋を開いた。

「なにって、電子辞書。意味知りたいんなら辞書引けばいいだろ」

 ほら、と言いながら香穂子の掌に電子辞書を載せる。
 対する香穂子は、蓋をぱたりと閉めて首を傾げた。

「辞書はもう調べたよ」
「じゃあ、なんで俺に聞くわけ?」
「そのことについて考えてたら、ちょうど衛藤くんが来たから。アメリカに行ってた衛藤くんなら、『Like』と『Love』の微妙なラインも上手く説明してくれるかなって」

 それを聞いた衛藤は、香穂子に見せつけるようにして長い息を吐き、眉間を押さえた。

「そんなもの、人に聞くことじゃないだろ。……だいたい、日本語にしたって『好き』と『愛』。そのラインなんて簡単に説明できるかよ」
「そう、だよね……」

 俯いてしまった香穂子を見て、衛藤は問いを発した。

「それで?」
「え?」

 主語のない問い掛けを受け、香穂子は上げた顔に疑問を浮かべる。
 意図が伝わっていないことに気づいた衛藤は、改めて質問を投げ掛けた。

「なんで『Like』と『Love』の違いについて、なんて考えてるのか聞いてるんだよ」

 ああ、と納得したように頷いた香穂子は、すぐに口ごもる。
 ちらり、と衛藤の顔を窺ってから、空を見上げて言葉を零した

「私の、ある人に対する気持ちが『Like』なのか『Love』なのかよくわからなくて」

 その言葉を聞いた衛藤の眉が、ぴくりと動く。

「ふーん。……違い、教えてやってもいいよ」
「えっ、さっき説明できないって……」
「今、思いついたんだよ。大きな声で言うことじゃないから、ちょっとこっち寄って」

 香穂子は視線を地上に戻し、衛藤の言葉に従って、身を衛藤に寄せる。
 衛藤は、背後から香穂子の肩に手を回すと、まろやかな頬――唇の真横に口づけた。

「こういうことしたくなるのが『Love』だよ。本当はこっちにしたいけど」

 空いているほうの手で顎を捕らえ、親指でふっくらとした唇をなぞる。

「LikeだかLoveだか気持ちがわからないやつなんかより、俺のこと見ろよ」

 香穂子は言葉を発せず、ただその頬だけが赤く染まった。
 息をすっと吸いこむ動作が見えて、香穂子のことだから下手をしたらビンタがくるか、と身構えた衛藤に訪れたのは、優しい衝撃。
 頬に、唇が触れたのだ。

「……最初から衛藤くんしか見てないよ」

 目を丸くして固まってしまった衛藤に、香穂子は照れ臭そうに微笑みかける。

「答え、見つかったかも」

 衛藤は、再び息を落とした。

「あんたって、本当……」

 呆れから笑みに変わった顔が、再び香穂子に近づく。
 何度目かのぼやけた視界を、香穂子は瞼を閉じて遮断した。







後書

ベタネタ?です。

最初は、全く別な吉日で考えていたんですが。
余力があったらそちらも書ききってみたい、かも。

ちなみに、私の中では2fED後想定。
PR
  • ABOUT
更新履歴ブログ「冴雫」。たまに小話か萌え語りカテゴリでSSS投下。
  • ブログ内検索
  • アーカイブ
Copyright © 冴雫 All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]