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冴雫
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「笑言十題」3つめ、「自分からやっといてアレなのですが、」は予告どおり衛日で更新。
このサイトでは初の衛日です。

SSSは追記からどうぞ。







 四月も後半。
 衛藤は、昼食を食べる為にカフェテリアを訪れていた。
 メニューをトレイに載せ、座る場所を探してぐるりと周囲を見渡した衛藤の視界に、付き合いが四ヶ月目に突入した彼女の姿が飛び込んできた。

「香穂子!」

 呼ばれたことに気付いた少女は、トレイを抱えたまま衛藤のほうを振り向いた。

「あ、桐也くん。桐也くんもカフェテリアでお昼?」
「ああ。香穂子もだろ?」

 互いにトレイを持っているのだから、確認するまでもない。

「うん。せっかくだから一緒に食べようか」

 香穂子の提案に、衛藤は「当然」と言いながら頷く。

「もう席は決まってんの?」
「まだだよ」
「俺も。じゃあ、とっとと席探そうぜ」
「うん」

 運よく、すぐに空いた席は見つかった。
 向かい合って、それぞれの選んだメニューを食べはじめる。

 時折会話を交わしながら食事をし、メインを食べ終わった香穂子はデザートへと手を伸ばした。
 一口、口に放る度に顔を崩す香穂子を見て、衛藤は可笑しそうに呟きを落とす。

「……あんたって、幸せそうに甘いもん食うよな」
「だって、美味しいんだもん。これは新作なんだよ!」

 瞳を輝かせながら、香穂子はデザートの美味しさを力説した。
 そして、ふと目を瞬かせる。

「……桐也くんは、甘いの大丈夫だっけ?」

 こてりと首を傾げた拍子に、髪がさらりと流れる。
 その動きに目を奪われながらも、衛藤はどうにか口を動かした。

「甘すぎるのは好きじゃない」
「じゃあ、これくらいなら平気かな?」

 衛藤の前に、スプーンが差し出される。

「は?」
「あれ、いらない?」
「『いらない?』じゃなくてさ。」

 いきなり「あ~ん」だなんてやられて、すぐに反応できるわけはない。

「ほら、美味しいから食べてみてよ」

 感想を求めるキラキラとした瞳に押され、衛藤はスプーンを口に含んだ。
 優しい、素朴な甘さを舌が感じ取る。

「うん、うまい」

 正直な感想を零すと、香穂子の唇が笑みの形に縁取られた。
 その笑顔を見ていた衛藤は、意趣返しを思い付いた。

 香穂子の手にしていたスプーンを奪うと、デザートを掬う。
 そして、香穂子の口元に差し出した。

「ほら、香穂子」

 衛藤の行動に目を瞬かせていた香穂子は、その行動の意味を理解すると途端に顔を赤く染めた。

「えっ、自分で食べるからいいよ」

 香穂子は大袈裟な程に手を振って遠慮するが、衛藤はスプーンを引っ込めない。

「ほら、食べろよ」
「恥ずかしいんだけど……!」

 衛藤は、何を今更、と呟きを落とす。

「自分からやり始めたくせに」

 先ほどの自分の言動を顧みて、香穂子は言葉を詰まらせた。
 しぶしぶ、差し出されたスプーンを口に入れる。

 香穂子はもう味覚など感じない状態ながら、食べ物を何とか咀嚼して飲み込む。
 水を一気に飲み干して息をつくと、視線を逸らすようにして周囲に向ける。

 すると、幾人もが香穂子と衛藤を見ているのに気づいた。

「……傍から見たら、私達ってバカップルじゃない?」
「その呼び方は気に入らないけど、そんなふうに見られるのば別にいいよ。香穂子とだったら」
「なっ……!」

 あまりベタベタとするのは好みそうにない衛藤の発言に、香穂子は目を見開いた。
 そんな香穂子の様子を眺めながら、衛藤は手を伸ばして紅い髪を手に取る。
 指先でそれをいじりながら、にやりと人の悪い笑みを見せる。

「むしろ見せつけたいし」
「……馬鹿」

 牽制が必要だからな、との呟きは衛藤の心の内にしまわれ、香穂子が聞くことはなかった。



なんか中途半端になってしまいました。
衛藤君への理解が足りない・・・!
精進します。
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