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冴雫
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携帯電話から小話投下!
携帯からなので、折りたたみとかしてません。
ご注意ください。

PCで折りたたみ編集しました。
勢いで書いたまま、文章は変更していないので、そのことをご了承の上どうぞ。







 香穂子は眩しい光に包まれた。
 思わず瞑っていた目を開くが、周囲には何の変化もない。
 変化と言ったら、光を発する原因となった妖精の姿がないことくらい。
 首を傾げながらも、香穂子はヴァイオリンケースを手にして屋上の扉を開いた。

 階段を下り、鞄を置いてある教室へ向かおうと足を進めるも、どうにも視線が痛い。
 擦れ違う生徒は皆、ヴァイオリンケースを手にしているのを見ると驚いたように制服とケースへ交互に視線をやるのだ。
 望んだわけではないが、度重なる二年次の出来事で学院内の有名人になってしまった香穂子は、最近では珍しい視線に首を傾げた。
 違和感を感じながらも教室に辿り着くと、中には数人の生徒が残っていた。
 自分の机に向かいながら相手を見ると、見覚えがない顔。
 他クラスの人か、と一人納得をしようとしたが、視界に入ったのは青いネクタイ。
 下級生が訪ねてきているのか、と考えて荷物をまとめようとするが、机には鞄がなかった。
 香穂子が驚きの声を発するより先に、教室内の男子生徒が訪問者に気付いて声を上げた。

「ここは3年の教室だぞ。1年は3階。」

 香穂子は高校3年生だ。
 だが、冷静に考えるより先に謝罪の言葉が出た。

「すみません」

 そのままパタパタと駆けて教室を出ると、入口にあるプレートを見た。
 プレートには、確かに香穂子が所属している学年とクラスが綴られている。
 からかわれたのか、とも考えるが、鞄がなくなっていることの説明がつかない。
 財布は身につけているし、鞄は学校指定のもので、教科書類もまだ机に入れたままのはずだった。盗まれる理由がない。

 冷たいジュースでも飲んで、一度頭を冷やそう、とエントランスに向かおうとした香穂子の目に、隣のクラスの壁に飾られていたカレンダーが飛び込んできた。
 何の変哲もないカレンダー。
 だが、香穂子にとっては見過ごせない記述があった。

 19XX年。

「…え?」

 香穂子は思わず自分の頬を抓る。

「…痛い」

 何度目を擦ってみても、カレンダーの年数は変わらない。
 携帯電話を取り出して、自宅や友人に電話をかけてみるが、コール音すらしない。
 メールを送ることもできないし、インターネットにも繋がらない。

 まさか、本当に…と青くなった香穂子は、驚きで固まってしまった頭を必死に動かす。

「元の時代に戻るには…原因を突き止めなきゃ駄目だよね。原因、原因…」

 原因はすぐに閃いた。
 この奇怪な現象の直前に接触したモノ。

「リリ!」

 この時代のリリには責任はないだろうが、解決策は知っているかもしれない。
 そう考えた香穂子は、ヴァイオリンケースをしっかりと掴むと足音を高らかに響かせ始めた。





「―――あっ、いた!!」

 直線の廊下。
 その途中にある曲がり角の所に、ふわふわと浮いている妖精の姿があった。

 香穂子は、ヴァイオリンを弾く契機となった春のコンクールを思い出しながら、妖精を捕らえるべく狙いを定める。
 あの頃は一定時間しか姿を現さないフェッロや、音色だけで姿を見せないラーメにてこずらされた。

 しかし、今回は相手はこちらが妖精を見えることは知らないはず。
 警戒はないだろう、と予測した香穂子は、妖精を捕えることだけに集中した。
 集中による無音の世界の後、妖精は香穂子の掌に易々と納まった。

「リリ!ちょっと聞きたいことがあるの!」

 香穂子は意気込んで言うが、妖精はまさか自分が捕まるとは思っておらず、目を白黒させている。

「お、おお…?あ、お前、我輩が見えるのか?しかも、名前まで知っているとは」
「それには色々あるんだけど、ひとまず…」

「ひとまず、私たちに説明をしてもらえるかしら?」

 興奮をしている香穂子とリリのの間に、涼やかな声が割って入った。
 誰かに見られていたのか、とぎこちなく首を声のほうに向けた香穂子の目に、3人の人物が映る。
 誰かに似た面影の、長くさらさらとした黒髪の少女。
 少女と同じ色のタイをした、くせっ毛の自信に満ちた少年。
 香穂子と同じ色のタイをした、黒髪に紅の瞳の少年。

 少年二人を見て、香穂子は今度こそ固まった。
 金澤と吉羅にそっくりだったのだ。
 もしかしなくとも、目の前にいるのは若かりし頃の彼らなのだろうか。
 だとすると、少女が誰に似ているのかも自ずとわかる。
 ファータが見えている様子であり、金澤と吉羅と供にいる少女。
 導かれる答えは、吉羅の姉。

「…美夜、さん?」

「あら、私の名前を知っているの?」

 思わず滑り出た言葉に、しまったと顔を歪めても、時は戻らない。

「えっ、え~と…」

 逃走を図ろうかと視線をうろつかせた香穂子に、それを遮るように若き金澤と吉羅が接近してきた。
 逃げられそうにない状況に、香穂子は乾いた笑いを零して、これが痛みのある夢なら早く覚めて欲しい、とファータに祈った。 







後書

実はずっと書きたかった、香穂子がタイムスリップして金やん&吉羅さん&美夜さんの前でリリを鷲掴みにする話です。
日参サイト様のタイムスリップパラレルを読んでいて、ネタが再燃してきました。
久しぶりに勢いだけで書き上げました。携帯はこういう時便利。

先と後は考えてません。
本当に、鷲掴みをする香穂子と、そのシーンを目撃する三人だけ書きたかったので…!


最近、やたらと細かいネタばかり思い浮かぶので、過去に考えたのも含めて放出しちゃいたいんです。脳内整理の為にも。
全部を下調べして、時間をたっぷりかけて、しっかり書いてたら大変なので、HPに載せる程しっかりした文章でないもの…要は勢いで書いたものはこちらでどんどん更新していければな、と思います。

というわけで、このブログをちょこちょこ更新する………かも。
期待はしないで下さい。

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